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歴史映画紹介


アレクサンドリア(2009年)


AGORA/スペイン

監督:アレハンドロ・アメナーバル

<キャスト>  ヒュパティア:レイチェル・ワイズ  ダオス:マックス・ミンゲラ  オレステス:オスカー・アイザック  テオン:マイケル・ロンズデール  キュリロス:サミ・サミール 他

2011年劇場公開(ギャガ)



映画『アレクサンドリア』予告編



映画『アレクサンドリア』の舞台は4世紀、ローマ帝国末期のエジプト、アレクサンドリア。女性天文学者ヒュパティアの悲劇の物語を映像化している。レイチェル・ワイズが知的で美しく凛とした女性哲学者を演じている。


ヒュパティア(370年?〜415年)は、4世紀後半に実在した天文学者・哲学者として知られる。しかし、彼女の思想や理念は、キリスト教からは異端として受け取られ、総司教キュリロスの部下である修道士たちによって惨殺された。映画の中では、石打ちにされたヒュパティアだったが、史実では、彼女の殺害方法はそれすら生ぬるい残酷なもので生きたままカキの貝殻で彼女の肉を骨から削ぎ落として殺害するというやり方だった、という。


現在のスペインの国民の95%がカトリックであるという。そんな中で、このように、キリスト教徒を徹底的に悪役(もちろん、古来の神々を信仰する勢力や、ユダヤ教を信仰する人たちを全面的に善に描いた一方的な作品ではないが)に描いた作品が受け入れられるというのは意外に感じる。wikipediaでは、スペインの宗教観に対して、『国民の大多数がカトリック教徒であるにも関わらず、近年ではローマ教皇庁が反対している避妊具の使用や同性婚を解禁するなど社会的には政教分離の思想が進んでいる点も特徴』とあり、自分が思っているより宗教観に対し寛容なのかもしれない。


【ストーリー】 ローマ帝国崩壊寸前の4世紀末。エジプト・アレクサンドリアには、ギリシア時代から続く“図書館”があり、人々は古来の神々を信仰して、今なお繁栄を続けていた。しかし、この町にも、ユダヤ教とキリスト教が勢力を拡げつつあった。天文学者ヒュパティアは美貌と知性に恵まれた優秀な天文学者で、多くの弟子達から慕われていた。中には彼女に好意を抱いている者もいたが、真理の探究に人生を捧げることを決めていたヒュバティアはこれを拒絶する。また、彼女に仕える奴隷のダオスも彼女に好意を寄せる1人だったが、身分の違いゆえに、それを言葉にすることはできなかった。


ある時、キリスト教徒によって古代の神々が侮辱される事件が起こる。報復を主張する者たちに、ヒュパティアはローマの長官に訴えるように主張するが今のローマ皇帝はキリスト教徒。決定権を持つのはヒュパティアの父で図書館長のテオン。このままではらちがあかないと見たテオンは、報復に賛成する。しかし、今のキリスト教徒の勢力は、彼らの想像をはるかに超えていた。図書館に逃げ込んだ古来の神々を信仰する者たちに、ローマ皇帝が下した採決は、図書館に立てこもる者たちの罪は問わない代わりに図書館を明け渡すようにというものだった。キリスト教徒がなだれ込んでくれば、幾世紀にも渡って収集されてきた人類の叡智が破壊されてしまうのは確実。わずかな時間にわずかだけでも資料を持ち出そうと慌てたヒュバティアは、ダオスに侮辱的な言葉を投げかけてしまう。このことをきっかけにヒュバティアと決別したダオス。また彼女の弟子たちも、次々とキリスト教に改宗し出世の道を歩んでいく。その中の、彼女の元弟子で彼女に好意を持っていたオレステスはアレクサンドリアの長官になっていた。キリスト教の指導者のトップであるキュリロス主教はオレステスの失脚を狙い、その弱点がヒュバティアにあることを見抜く。そのヒュバティアは、ただ黙々と、宇宙の真理を解き明かすべく、学問の探究にいそしんでいた。


古代の街並みを見事に再現した映像は素晴らしい。上質の歴史映画だと感じる。やはり圧巻なのは、キリスト教徒達によって図書館が破壊されていくシーン。上空から映し出されたキリスト教徒の大群がなだれ込み、文化の極みを破壊していく様は、同時に、現代にいたるまで途切れることなく続いてきた宗教対立の残酷さと愚かさを凝縮している。……というより、それがこの作品の本当の目的なんじゃないかと思う。古代歴史物の体裁を取りながら、宗教の不寛容さがどれほど多くの血を流して来たか、宗教の教義を歪めて自分の利益のために利用しようとする人間の何と恐ろしいことか……。それは時代が変わっても変わらないものなんだろうと思う。


おススメ度: 歴史作品としても良作の部類に入ると思う1本。壮大に感じるテーマを扱っている割にずいぶん狭い人間関係の中で物語が進んで言ったなぁ、と感じるが、その分分かりやすい作品になっていると感じた。おススメ度はBにしている。




【アレクサンドリアの歴史】