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歴史映画紹介


アメイジング・グレイス(2006年)


Amazing Grac/イギリス

監督:マイケル・アプテッド

<キャスト>  ウィリアム・ウィルバーフォース:ヨアン・グリフィズ  バーバラ・スプーナー:ロモーラ・ガライ  ウィリアム・ピット:ベネディクト・カンバーバッチ  チャールズ・フォックス卿:マイケル・ガンボン  バナスター・タールトン:キアラン・ハインズ 他

2011年劇場公開(ブレシディオ)


18世紀終わりから19世紀初めのイギリス議会で、奴隷制の廃止に尽力した実在の政治家、ウィリアム・ウィルバーフォースの半生を映画化した作品。映画『アメイジング・グレイス』は2007年に奴隷貿易廃止200年を記念して制作された作品。ウィルバーフォースは1785年ごろから1833年7月に73歳で死去するまで、奴隷解放に向けた精力的な活動を続けた。イギリス帝国内の全ての奴隷を解放する奴隷制廃止法が成立したのは、ウィルバーフォースの死後1カ月後のことだったという。


映画のタイトルになっているアメイジング・グレイスは、おそらく誰しも一度ならず聞いたことのあるであろう名曲。日本では「すばらしき恩寵」などと訳される。1770年代に、敬虔なクリスチャンでありながら、黒人貿易に手を染めたジョン・ニュートンが、そのことへの深い悔恨と懺悔、赦しを与えてくれた神への感謝を込めて讃美歌として作詞したものだという。映画『アメイジング・グレイス』の中でも、ジョン・ニュートンが登場し、自らの悔悟を語り主人公を後押しする重要な役回りで登場している。


ストーリーの始めは1797年。イギリスの政治家のウィリアム・ウィルバーフォース(ウィルバー)は心身を病んでアヘンチンキを服用するようになっていた。長年、奴隷廃止に向けて精力的に取り組んできたウィルバーだったが、いまだ実現には程遠い状況が続いていた。悪夢にうなされ追いつめられる日々が続く中、ソーントン夫妻からの紹介で18歳年下のバーバラと知り合う。最初はウマの合わない2人だったが、やがて両者は共通の考えを抱いていることを知る。


ウィルバーは15年前、友人のウィリアム・ピットの紹介で奴隷廃止主義者達と知り合った。元々奴隷制を快く思っていなかったウィルバーだったが、その頃のウィルバーは聖職者と政治家の道のどちらの道に進むか決めかねていた。奴隷制の現実と真剣に向き合い政治の道に進むと、ピットが首相になるとその側近として奴隷貿易廃止運動に尽力する。世論は奴隷貿易廃止の機運が盛り上がっていたが、肝心の議会ではフランス革命やナポレオン戦争の影響による経済が疲弊しており、奴隷廃止を訴える者は売国的であるとして排撃されていた。しかし、議員の中には心情的には廃止に傾いているものが多く、おり、賛同者も増えつつあった。


バーバラと一晩かけての話し合いの末、ウィルバーはかつての意欲と気力を取り戻し、バーバラとの結婚を決意した。かつての仲間たちとの再会を経て策略を交えつつ、世論に・議員に廃止法を訴えているウィルバーたち。廃止法は、ついに現実味を帯びてきた。


奴隷制廃止という理想と、経済という現実。議員たちも、内心では奴隷制を嫌いつつも、地元有力者の意向を無視すれば票を失うというジレンマ。議会制民主主義の抱える現実を、奴隷貿易廃止を巡る攻防を舞台に描いた名作だと感じた。


おススメ度: 実話をもとにした作品ということもあり、ドラマチックかつスリリングといった見せ場には乏しく、ドラマとしては弱いかもしれない。しかし、現実の重みがしっかり伝わってくる映画だったと思う。おススメ度はAにしている。




【ジョン・ニュートンについて】




【アメイジング・グレイス】