TURNING☆POINT〜世界史(西洋史)を舞台にした歴史映画・DVD紹介のサイト〜


カスタム検索


歴史映画紹介


バッシング(2005年)


BASHING/日本

監督:小林政広

<キャスト>  高井有子:占部房子  高井孝司:田中隆三  支配人:香川照之  高井典子:大塚寧々 他

2006年劇場公開(バイオタイド)



映画 「バッシング」 (05 日/0606 公開) 予告編



2004年。イラクでボランティアやジャーナリストなど男女3人が武装グループによって拉致された。武装グループは自衛隊の撤退を要求し、退避勧告が出ていた地域で起こった事件ということもあって、日本国内でも被害者に対し“自己責任”という言葉でバッシングが巻き起こった。

この作品は、未だ記憶に新しいイラクでの日本人人質事件自体を映像化したものではない。あの事件をヒントにした、まるでウィルスのようにあっという間に広がったバッシングに対する問いかけをしている。ただ、この作品を見て、日本って酷い国だなあとか、日本国民って冷淡だと思ってもそれ以上の感情が湧いてこない。事件自体を大局的に描いていないので、なぜこうなったのかがよく分からない。イラクに行く前、事件が起きて各々がどう現実と対峙したのかを描き、それから帰国してからどう現実と向き合ったのか、を描くべきだったと思う。あの事件の話だけをすれば、バッシングが始まったきっかけは被害者の家族が解放の条件にあった自衛隊の撤退を軽々しく口にしてしまい、それに対して「危険だと知ってて行ったんじゃないのか?」 という声からだったたように思う。自分自身、外に対して口にしたり意見として発信したりはしなかったものの「左翼が自分の家族の命を盾にして政治的プロバガンダを展開している」と憤りを感じた記憶がある。そして、被害者の理想や信念に対しても、「もしも海外でなにかあった時のことを何の相談もせずにあんな危険な地に行ったのか?」 と感じていた。

結局のところ、初めて経験することに被害者の家族も、ひょっとしたらマスコミも政府も日本国民もある種の思考停止とパニック状態に陥っていたのかもしれない。一部国会議員の発言には、「この忙しい時に面倒なことを引き起こしやがって」 という感情が垣間見えた。この事件は報道の在り方、海外における邦人の保護、被害者となってしまった場合にどう発言をするべきか、というような様々な教訓を残してくれたと思う。今後もしっかりと検証されなければならないだろうと思う。恐らく、充分な時間が経てば誰かが事件自体をしっかりと映像化してくれるだろう。

この作品に目を戻すと、この難しいテーマに、出演者がしっかりと答え、エンターテイメント作品ではない考えさせられる作品に仕上がっている。ただ、主人公、高井有子の個性の強さが気になる。まるで棘をばら撒きながら生きているような彼女の姿は、擁護しづらい。少なくとも回想の中ででも事件に遭う前の彼女を描くべきではなかっただろうか。さらに、中東に行った理由が自分探し・自己満足の域を出ないことも気になる。子供の時から何もかもダメで、でも向こうに行ったら手を引いただけで喜んでくれる来る人がいるの。駄菓子上げたら「ユーコ、ユーコ」 って喜んでくれる……。正直これでは、孤独を紛らわすために野良猫に餌付けして近所から苦情が来てるのに「誰にも迷惑かけてない!」って強弁しているようで……。むしろ第3者的な視点から描いた検証のような作品のほうが良かった気がする。 

おススメ度: おススメ度はにしているが、あの事件そのものを描いている作品ではないので歴史映画のサイトとしてはちと評価低め。物語の中盤、元恋人に責められた有子は思わず叫んでしまう。 「“みんな”って誰!」 “みんな”が言っている、“みんな”がそう思っている。姿見えぬ“みんな”が追い詰めていく様はある意味ホラーだ。まるで魔女狩りにさらされた哀れな女性やホロコーストの犠牲者のそれのようだ。ただ、あの事件の被害者の家族にこのような悲劇があったわけではなく、そういった意味では胸に来るものはあまりなかったかなと思う。自分も含めて、あの事件で様々な感情を持った人たちが観て、愛国心という大義名分を掲げたバッシングという弱い者いじめの気持ち悪さを体感できれば、それでいいのかもしれない。責められるべき人たちはもっと他に沢山いるはずなのだから。



【関連商品】