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歴史映画紹介


善き人のためのソナタ(2006年)


DAS LEBEN DER ANDEREN:THE LIVES OF OTHERS/ドイツ

監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナ<キャスト>   ヴィースラー大尉:ウルリッヒ・ミューエ  クリスタ=マリア・ジーラント:マルティナ・ゲデック  ゲオルク・ドライマン:セバスチャン・コッホ  ブルビッツ部長:ウルリッヒ・トゥクールー  他

2007年劇場公開(アルバトロス・フィルム)



善き人のためのソナタ 日本版予告編 Das Leben Der Anderen Trailer Japanese



1984年の東ドイツを舞台にした名作映画。社会主義体制下の東ドイツの監視社会を克明に描いた作品。


映画『善き人のためのソナタ』の主人公、ヴィースラー大尉は国家保安省(シュタージ)で反体制派の弾圧に力をつくし大きな功績をあげていた。社会主義体制こそ至上のものと信じて疑わないヴィースラー大尉に、劇作家ドライマンと同棲相手の女優クリスタの監視が命じられた。ドライマンの部屋には盗聴器が仕掛けられ、ヴィースラー大尉は24時間体制での監視が始まった。


『善き人のためのソナタ』のシーンは、おもにドライマンの部屋と、ヴィースラー大尉の監視部屋の映像が行ったり来たりしながら展開する。明るく光に満ちた感じのドライマンの部屋と寒々しいヴィースラー大尉の部屋の対比が、個人的には印象に残る。ヴィースラー大尉がドライマンとクリスタの等身大の恋愛に共鳴し、監視から見守るようになって行く過程は、そのきっかけが「真剣に聞いたものは悪い人間にはなれない」と称される善き人のためのソナタのピアノ演奏というのは弱い感じがするものの、「どんな人間であれ暗闇の中では生きられない。求めるのはいつでも光なのだ」という感じがした。


淡々とした映画である。そのため、途中で退屈を感じてしまうかもしれない。そういう映画が苦手な方は手を出されないほうがいいと思う。ラストで、組織を裏切りドライマンとクリスタを救おうとしたヴィースラー大尉は、末端に降格させられ、ベルリンの壁の崩壊によってドライマンは自分が監視されていた事実を知る。自分を監視していた人間に会いたいと思ったドライマンは、ヴィースラーを目撃し、しかし、声をかけることなく去っていく。その数年後に、ドライマンは本を出版する。ドライマンの本を手に取ったヴィースラーは最初のページを開き「HGW XX/7に捧げる」の文字を目にする。秀逸なラストだったと思う。


ヴィースラー大尉を演じたウルリッヒ・ミューエ自身、東ドイツで妻からの密告により監視を受けた経験があったという。7人に1人が秘密警察かその密告者という異常な国であった東ドイツの現実もまた、克明に描かれている。そしてそれを描いたのは弱冠33歳の新鋭。最後まで、ポーカーフェイスのヴィースラー大尉のほんのわずかな表情の変化やしぐさだけで感情を描き出すウルリッヒ・ミューエの好演が光る作品。しかし、監視対象とされた経験のある役者が、監視者役を演じた映画で高い評価を受けたというのも少し皮肉に感じる。


おススメ度: 淡々として派手さのない作品だが引き込まれる。もっと感情の変化がわかるように心理描写をしっかりしてほしいと最初は思ったものの、見終わった後では、その必要はなかったと感じた。おススメ度はにしている。




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