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歴史小話


人類最後(かもしれない日)を人はどう迎えたのか?



ハレー彗星は約76年周期で地球に接近する短周期彗星であることが知られています。ハレー彗星ほど大きく明るい彗星で日本人の平均寿命程度の短期間で周期する彗星は他にはなく、多くの周期彗星の中で最初に知られた彗星です。紀元前から多くの文献にハレー彗星と思われる彗星の記述が残っています。イギリスの天文学者エドモンド・ハレーは1682年に観測された彗星が、531年にドイツのペトルス・アピアヌスが、1607年にプラハのヨハネス・ケプラーがそれぞれ観測した彗星がよく似た性質を持っていることに気付き、この3つの彗星は同じものであると結論付けました。ハレーは次の出現をは1757年と予測し、1758年12月に彗星が観測されたことでハレーの説の正しさが証明されました。すでにこの時ハレーは没していましたが、彗星にはハレーの名がつけられました。

最近の彗星の接近は1986年(昭和61年)のこと。そのもう一つ前は1910年(明治43年)のことでした。彗星は太陽から遠いところでは小惑星と区別がつきませんが、太陽に近づくと彗星核の周囲を取り巻く星雲状のガスやダスト(エンベローブ、コマ)が昇華して吹き飛ばされ尾を作ります。1986年にハレー彗星が接近した時には各国が探査機を打ち上げ、彗星核の成分が調べられ成分の大半が水(氷)で炭素が多く含まれることが分かっています。

1910年のハレー彗星の接近の際には前年9月の発見以降、天文学者らの推測によって、太陽面を通過した際に尾の中を地球が通過することが予言されました。彗星の尾には有害なシアン化合物が含まれていることが分かっており、一部の科学者の説が元になって尾に含まれる猛毒成分により、地球上の生物は全て窒息死するという噂が広まりました。

さらに、ハレー彗星の接近によって地球の空気が吸い取られ5分ほど無酸素状態になるという流言が広まり、日本でのその時間は5月19日11時22分と推測されました。海外ではローマ法王庁が「贖罪券」を発行すると希望者が殺到したとか、アメリカで特効薬と称して偽薬を売ろうとした人間が逮捕されたとか、メキシコでは「処女を生贄にすれば助かる」と信じた暴徒によって女性が襲われる事件が起きたとか。ハレー彗星による人類滅亡にまつわる逸話はいくつか残されています。日本でも、裕福な家庭の人間は自転車のチューブを買い占め酸素がなくなった時に備え、貧しいものは桶に張った水に顔をつけて来るべきその時に備えて訓練をする者も多く出てきました。世界が滅亡してしまうのだからと散財に走る者も出て、歓楽街は大いに賑わったと伝えられます。

しかし、このことをきっかけに大規模な騒乱や暴動が起きたということはなかったと伝えられます。人々は、世界が本当に滅亡するかもしれないその日、その時を、不安と期待を込めて迎えたのでしょう。実際には、彗星の尾に含まれる有害物質は地球の大気に阻まれ、人体に影響を与えることはありませんでした。人々がいかにこの日を迎えたかについては、戦後、1949年(昭和24年)に『空気のなくなる日』という映画でも描かれました。