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歴史映画紹介


ジャンヌ・ダルク(1999年)


Jean of Arc/フランス

監督:リュック・ベッソン

<キャスト>  ジャンヌ・ダルク:ミラ・ジョヴォヴィッチ  シャルル7世:ジョン・マルコヴィッチ  ヨランド・タラゴン:フェイ・ダナウェイ  ジャンヌの良心:ダスティ・ホフマン 他

1999年劇場公開(SPE)


15世紀はじめ。イングランド王兼フランス王を自称したエドワード3世が、公然とフランス王に挑戦状を叩きつけて90年。長短の休戦をはさみながら、世代を超えて続いた英仏百年戦争も、イングランドと、イングランドに味方するフランス国内の勢力によって、フランス王位の正当な後継者、シャルル7世の命運は風前の灯となっていた。そこに登場したのが、フランス史上最も有名なヒロイン、ジャンヌ・ダルクだった。シャルル7世に謁見し、軍を与えられた彼女は敵軍によって包囲されていたオルレアンを開放し、さらに北上し、ランスでシャルル7世を正式に戴冠させる。しかし、その後のジャンヌの行動は、精彩を欠いた。転戦を続けるも戦果を挙げられず、ついに捕虜にされイングランドへと引き渡される。そして、宗教裁判によって有罪が確定し、火刑に処された。20年後、復権裁判でその名誉が回復され、その500年後の1920年。聖人に列せられた。


先ほど、“フランス史上最も有名なヒロイン”とジャンヌ・ダルクを紹介したが、ジャンヌの名が有名になったのはナポレオン・ボナパルトの時代になってからだそうだ。それ以前は、故郷や、ジャンヌによって開放されたごく一部の都市のみに伝わる昔話だった。それを、1803年にナポレオンが戴冠する際に、救世主の物語として、大々的にPRした。もちろん、オルレアンを開放し、ランスでの戴冠を実現したのはジャンヌの功績である。その後のフランスの大反撃も、ジャンヌのオルレアン解放がきっかけになったとはいえ、1453年にイングランド勢力をほとんど追い払うまで、20年の月日を要した。今日語られるジャンヌ像は、どこまで真実のジャンヌをとらえているのだろうか。


映画の紹介のはずが、思いっきり脱線してしまったけど、ジャンヌ・ダルクという人物はとても描きにくい人だろうと思う。その行動原理は、神の声に導かれ、しかし、その行動は極めて合理的だった。後世の歴史家、作家が彼女に興味を持ったのも当然と言えば当然で、多くの歴史家によって研究され、多くの作家によって、たくさんのジャンヌ像が描かれている。もちろん何度も映画化もされている。リュック・ベッソン監督も独自のジャンヌ像を創るのに苦労しただろうと思う。


映像は本当に素晴らしい。戦闘場面の迫力ある映像は圧巻だった。鎧なども、細部までこだわり、中世フランスをスクリーンの中に造りあげた。ジャンヌ・ダルク役には『フィフス・エレメント』のミラ・ジョヴォヴィッチ。それなのに……。完成度は高く見えるのに、つまらなく感じる。結局、ジャンヌの内面描写がしっかりできていなかったように思う。将たちを相手に徹底抗戦をヒステリックに主張し、戦闘が終わった戦場で累々と横たわる敵味方の死体を前に、こんなはずではなかったと嘆いてみせる。情緒不安定さばかりが目立ってしまった気がする。


後半、イングランドに捕らえられたジャンヌは孤独の中、ダスティ・ホフマン演じる自分自身の良心に責めたれられる。自分の正当性、正義を主張するジャンヌに対し、自身の良心は嘲笑する。自分が信じてきた正義は次々に覆され、しかし、最後に残ったものは神への信仰心だった。


「神の声を聞いたのではない。自分が見たいと思ったものを見ただけなのだ」物語後半で出てくる台詞が、監督の、神に対する主観なのだろうか。でも、結局は全てに対して、それが真実のような気がする。


おススメ度: グラフィックや戦闘のシーン、衣装なども作りこまれていてなかなか素晴らしいものだと思う。しかし、見どころ(というかテーマが明確になるのは)ダスティ・ホフマン演じるジャンヌの良心との対決の場面。自分個人は決して無神論者ではないが、仏教的な仏は己のうちに宿るとか、神道的な神は森羅万象に宿る的な考え方のほうがしっくりくるので、この場面は特に違和感なくみられたが、かなり違和感というか嫌悪感というかそういったものを感じる人も多いのかもしれない。おススメ度はとしているが、ジャンヌをあくまでも聖女として見ていたい人にとってはおやめになるのが無難かも。




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