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歴史映画紹介


KT(2002年)


KT/日本・韓国

監督:阪本順治

<キャスト>  佐藤浩市  キム・ガプス  チェ・イルファ  筒井道隆 他

2002年劇場公開(シネカノン)


【金大中韓国大統領候補拉致事件】 1973年8月8日。韓国で民主化運動の中心人物であり大統領候補にもなった金大中氏(1997年に韓国大統領になっている)が東京で、韓国中央情報機関(KCIA)によって拉致された事件。金大中氏はその5日後に解放された。日本国政府は、この件を外交的な配慮からうやむやのうちに終結させ、国内からも批判された。2007年に韓国政府は政府として初めて公式に情報機関の関与を認めた。

1973年に起こった金大中拉致事件の映画化。金大中氏が大統領だった2000年に制作が始まった作品。事件そのものは興味のあるものであり、この作品自体の出来はそれほど悪くないと思う。こういう事件があったということはちゃんと知っておくべきだろう。

ただ、個人的にはあまり好きにはなれない作品だった。それは、佐藤浩市が演じる富田なる自衛隊情報機関に属する男の存在に対して。つまり、主役に対する耐えがたい不快感が、個人的にこの作品の評価を大きく下げる。少なくとも、現段階において自衛隊情報機関や、警視庁公安部を始めとした日本の国家機関の事件に対する直接的な関与は確認されていない。確かに、黙認をした可能性や金大中氏を解放するために何らかの国家機関が動いた可能性自体は否定できないにせよ現段階において確認されていない。事件そのものは韓国人が日本国内で起こした不法行為以外の何ものでもない。しかし、この作品では日蔭者である自衛隊にコンプレックスや、戦後日本や憲法9条に疑問を持つ自衛隊情報機関の富田が、積極的に拉致に関わり、最後は運命共同体と見据えたはずの韓国情報機関の同志たちに、「それじゃ」の一言を残して消えていく。

この作品は韓国でも公開された。韓国人に、日本の自衛隊の情報機関の人間が、韓国の政治家(しかも民主化運動のリーダー)を誘拐したという“でっち上げ”を堂々とさらすことが、果たして適当であろうか? 日本人はやはり陰謀たくましく大韓民国が民主化されるのを妨害していたのだ、そんな風に受け取られないだろうか? そんな疑念が頭をよぎる。いい作品を作るためなら国益などどうなったってよいのだ、という考え方には賛成できないし、好きにもなれない。しかも、富田はあくまで個人として行動しており、国家機関そのものの積極的な関与は描かれない。過度に“でっち上げ”をエスカレートさせて日本人からも批判されることを嫌がったようにも受け取れ、それも不快だ。正直な言い方をすれば、シナリオの中心を韓国の軍事政権と民主化運動にするべきではなかったか、と思う。

……などといろいろ憶測だけで書いてしまったが、映像や役者の演技には好感のもてる作品だった。拉致の中心人物の金雲中が接近する自衛隊機に発砲する場面には凄みを感じた。筒井道隆が演じる在日の青年は、日本で生まれ日本語しか話せない、アイディンティティの定まらない、だからこそ金大中のボディガードを全力でこなそうとする姿には好感が持てる。

おススメ度:正直なところ、戦後、日蔭者として生きることになった日蔭者の自衛隊諜報部隊員の男の反乱というストーリーにあまりリアリティ(というよりも魅力)を感じなかった。事件の底辺を流れるどす黒いものが感じられなかったのは、物語が政治劇仕立てになっていないからのように感じた。自分自身あまり事件に対して予備知識を持っていなかったので楽しめないかと感じたが、むしろ、事件に対しての予備知識を全く持たないほうが意外に楽しめるのかもしれない。おススメ度はにしている


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