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歴史映画紹介


ミュンヘン(2005年)


MUNICH/アメリカ

監督:スティーヴン・スピルバーグ

<キャスト>   アヴナー:エリック・バナ  スティーヴ:ダニエル・クレイグ  カール:キアラン・ハインズ  ロバート:マチュー・カソヴィッツ  ハンス:ハンス・ジシュラー 他

2006年劇場公開(アスミック・エース)



ミュンヘン (2005) 日本版予告編 MUNICH Trailer Japanese



【ミュンヘンオリンピック イスラエル選手団殺害事件】 1972年9月5日。オリンピック開催中の西ドイツの年、ミュンヘンで、イスラエル選手団を狙ってパレスチナ武装組織、黒い九月のメンバー8名が侵入。抵抗した選手やレスリングのコーチの2名を射殺し9名を人質とし、犯行声明を出した。黒い九月はイスラエルに拘束されているパレスチナ人234名の解放を求めたが、イスラエル側はこれを拒否。西ドイツは武力による解決より選択肢は無くなったが、当時の対応に当たった警察の指揮官も作戦に従事した警察官も高度な対テロ作戦の専門訓練を受けたこともなかったという(西ドイツの法律で国内における軍隊の行動に大きな制限をかけていたためだという)。様々な不手際が重なった結果、銃撃戦となり黒い九月側はリーダーを含め5名が死亡3名が逮捕(この3名は、その後発生したハイジャック事件で人質と交換で解放されることになる)、人質は9名全員が死亡、警察官にも1名の死亡者が出る。この事件は有名な対テロ特殊部隊の国境警備隊第9グループ(GSG−9)創設の契機となった。


イスラエルはこれに対して報復を開始。パレスチナゲリラの基地に空爆を行い数百人の犠牲者が出たとされる。また、イスラエル諜報機関モサドによる“神の怒り作戦”が実行に移され、ミュンヘン事件の首謀者や関わった(とされる)人間が殺害され、黒い九月もその報復としてモサド工作員やその協力者を暗殺した。ヨーロッパで一般市民が殺害され、その実行犯としてモサド工作員が逮捕されたため、事態が表に出ることになった。神の怒り作戦についてイスラエル、パレスチナ双方とも正式な発表は行っていないとされる。


この作品は、この神の怒り作戦に関わったとされるアヴナー(もちろん偽名)らモサドの暗殺チームの実話をもとに脚色を加えつつ描いた作品とされる(ただし、イスラエル政府や政府の元高官らは、アヴナーの話を否定している。)。


ミュンヘン事件をきっかけに、モサド工作員のアヴナーに、ある密命が下る。彼のもとに、集められたスペシャリスト達。彼らの任務はヨーロッパに潜伏してい大物テロリストを発見し殺害することだった。ヨーロッパに潜入したモサド工作員は、困難に直面しながらも、忠実に任務を遂行していくが……。


『シンドラーのリスト(1993年)』『アミスタッド(1997年)』『プライベート・ライアン(1998年)』など社会派の作品も数多く手がけているスピルバーグ監督だが、この作品は扱っているモノがモノだけに、さらに異質なものになっている。イスラエル、パレスチナ双方に肩入れすることなく、正確な全体像が見えない事件を描いた結果、イスラエルからもパレスチナからも非難され、スピルバーグ監督作品の中でも特に物議を醸す作品になってしまった。まあ、本人も分かり切ったうえで製作した作品だっただろうが。


事件の大きさやパレスチナ問題の根深さ。報復の連鎖の帰結という深遠なテーマに、様々な演出を練りこんだ結果……かなり疲れる上に内容の理解がおぼつかない作品になったという気がする。話の中でミュンヘン事件や家族の話など回想の場面が多々出てくるものだから、分かりづらいことこの上ない、と感じる作品になってしまったのは確か。グロテスクなシーンも出てくるし、娯楽大作ではあるが腹を決めて観たほうがいい作品。


報復の連鎖は何も生まないという考え方を批判する気はない。少なくとも、この作品で描かれているような事実があったとすれば、それは非難に値することだろう。しかし、モサド工作員のような任務を帯びた工作員が不要だという考え方に立つことが素直にできないのも本音ではある。もしも、ミュンヘン事件のような事件が日本で起きたとき、日本の警察(あるいは自衛隊が)犯人を拘束、あるいは射殺した場合、検挙された仲間の奪還を狙ってテロ組織は民間人を巻き込んだ行動に出ることは十分にあり得る。あるいは、テロという形での報復がある可能性も考えられるだろう。1977年のダッカ事件では、日本国政府は超法規的措置として600万ドルの身代金を支払い、殺人犯、テロリストを国外に解き放ち、日本はテロリストまで輸出すると国内外から非難された。それらの反省から、日本でも特殊部隊の創設の必要性が検討され、東京・大阪の機動隊にSAT(特殊急襲部隊)の前身となるチームが創設された。報復のための報復は何も生まない。しかし、そういった実効制圧力の整備もまた、平和への渇望から生まれているものなのは否定できないのではないだろうか。


おススメ度: 改めて、中東問題の根深さを見せつけられた作品。娯楽作と割り切って観る分には退屈で疲れると感じるかもしれないが、パレスチナ問題を考える契機にはなろうと思う。映画そのものの評価というよりも、こういった批判が出ることが分かり切っている事件に正面から向き合った作品ということで、おススメ度はにしている。




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