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歴史映画紹介


聖衣(1953年)


THE ROBE/アメリカ

監督:ヘンリー・コスター

<キャスト>  マーセラス:リチャード・バートン  ダイアナ:ジーン・シモンズ  ディミトリアス:ヴィクター・マチュア  ペトロ:マイケル・レニー  カリギュラ:ジェイ・ロビンソン 他

1953年劇場公開(FOX極東)



"The Robe" Trailer



映画『聖衣』の舞台となっているのは紀元30年ごろの古代ローマの統治する時代。ティベリウス帝、カリギュラ帝が統治していた時代。弾圧の真っただ中にあったキリスト教勃興期の物語。聖書をもとにした物語。

主人公のマーセラスはローマの護民官だった。有力な元老院議員の下に生まれ、順風満帆だったマーセラスの人生は、のちの皇帝カリギュラと些細なことで対立したことで大きく変わっていく。カリギュラにより、エルサレムへ派遣されたマーセラスは、ピラト総督により、イエスを処刑することを命じられる。イエスを救世主とする集団は大きな力を持ち始めており、無視することはできなかった。しかし、イエスの処刑を終えたマーセラスは、良心の呵責に耐えかねて苦しみ始める。それを、イエスの遺物である衣の呪いだと考えたマーセラスは再びエルサレムに向かう。そこで出会うイエスに影響を受けた人々の姿にマーセラスは揺れ動く。かつての奴隷だったディミトリアスの導きもあってイエスの教えを信じるようになる。そのことで、カリギュラ帝に追われることになったマーセラスは、ついに捕えられ、カリギュラから「信仰を捨て、皇帝に忠誠を誓うこと」を命じられる。しかし、「皇帝に忠誠は誓えど、信仰は捨てられない」ことを宣言し、恋人ともに殉教の道を選ぶ。

映画自体としては、名作とは言い難いというのが感想。中心となっているのはローマに弾圧されながら信仰を守り続けるキリスト教徒の美しさだろうか。保守的なアメリカ人ならとにかく、キリスト教に宗教的バックボーンを持っていない日本人が興味を引くような映画でもないというのが感想。古代ローマ、キリスト教といったテーマが並ぶ作品なら、同時代に制作された『クォ・ヴァディス(1951年)』のほうがはるかにお勧め。

マーセラスの心の病は、イエスを処刑にかけたことに対する罪の意識だった。その割に、拷問の場面がほとんど出てこないのはちょっと気にかかる。個人的には「イエスを処刑にかけたこと」ではなく「処刑の現場に居合わせたこと」こそが心の病を生み出すきっかけになったのではないだろうか、と思う。古代ローマ時代の拷問は、例えば『パッション(2004年)』で描かれたような凄惨なものだった。……意外に古代ローマの兵士の多くはPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされていたのではないだろうか。

『聖衣』の時代のローマは多神教の国だったとされる。ローマの神に対する意識は、併合した属州の神をローマの神の中に受け入れ、取り込んでいく寛容さで、一時は三十万柱にも及んだとされる。ティベリウス帝はローマ市民はローマの神のみを信じるべきとして、ほかの宗教を厳しく禁じた。その中で激しく弾圧されたのがユダヤ教とエジプトのファラオ信仰だったという。ティベリウス帝の時代、エジプトはつい数十年前まで現人神としてファラオが国を治めていたわけだし、ユダヤ教が迫害されたのは他教に対する非寛容さにあったのだろう。だから弾圧が正しいとは言わないし、ユダヤの側からすればローマはれっきとした侵略者だっただろうが。それでもローマ側を無視した一方的な描き方であるように感じる。

おススメ度: アカデミー賞受賞作品だが、受賞したのは美術・衣装である。映画として、ストーリーは割と単調に感じるし、ヒロインがあまりパッとしないという印象があった。おススメ度はにしている。