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歴史小話


サー・ガウェインの花嫁 後編



アーサー王の悩みの理由を聞いたガウェインは、「何も悩むことはありません」ときっぱりと言いました。

「私がそのいまわしい女とやらと結婚いたしましょう」

アーサー王は慌てて首を振りました。

「それは駄目だ。わが甥よ。お前はわが姉の子。かの者は、あまりにも恐ろしくあまりにも醜い女なのだ。誰がお前にそんな過酷な運命を与えることなどできようか」

しかし、ガーウェインも頑固者ですので絶対に譲りません。最後はアーサー王が諦めて、ガウェインがあの女を花嫁とすることになりました。アーサー王の心は深い悲しみに満ちていましたが、もはや仕方がありません。アーサー王は供の騎士を連れて、女を迎えに行きました。そして彼女を見つけると、「あなたの夫となる騎士を見つけました」と告げます。女は、自らの名前を、ラグネルと名乗りました。

それを幸福なはずの結婚式だと思う者は誰もありませんでした。ガウェインの横のあまりに醜くおぞましい女の存在に誰しも青ざめました。ガウェインは仲間たちのあざけりやからかいをできるだけ我慢していました。祝宴は開かれず沈鬱の中、結婚式が幕を閉じるとガウェインは姿を隠してしまいました。

夜になり2人っきりになると、ガウェインは胸の奥から湧き上がってくる深い悲しみを隠すことができず、深いため息をつきました。ラグネルは何をそんなに悲しんでいるのかと問います。ガウェインは率直に答えました。それは、あなたの年齢と、容姿の醜さと、生まれの卑しさのためだ、と。

ラグネルはそれに対して、一つ一つ、理路整然と反証します。すなわち、年を取っているのは分別があること、容姿が見にくいのは姦通の恐れがないこと。そして、本当の身分の良さとは生まれによってきまるものではなく、その人の人格によってきまるのだ、と。ガウェインは何も答えませんでした。

しばしの沈黙が流れました。ガウェインはふと顔をあげ、ラグネルのほうに目を向けました。そこには先ほどまでいたはずの醜い顔の女がいませんでした。その代わりに、色白の見たことのないような美女がそこには立っていました。ガウェインは驚いて、あなたは誰なのか? と問いました。

「私は、あなたの妻のラグネルです。……あなたが、私を妻として認めてくれたら、ですけれども。私は、悪しき魔法使いによって醜い姿に返られていました。この呪いを解くにはふたつの条件が必要で、一つは、高貴な騎士を夫として迎えることだったのです。これで、呪いの半分が解け、一日の半分を本当の姿で過ごすことができるようになったのです」

唖然とするガウェインに、ラグネル姫はこう続けます。一日の半分の内、昼間の半分と、夜の半分の、どちらをこの姿でいることができるのかを選ぶことができます。あなたは、どちらを希望しますか? と。

ガウェインは、それならば、夜、二人きりの時に美しいその姿を見せてほしい。そして、できることなら昼間はほかの貴婦人や騎士たちには今の醜い顔を見せてほしいのだが、と言いました。ラグネル姫は、昼間、騎士や貴婦人に囲まれているときに、この姿でいたいのですが、と答えます。ガウェインは、ラグネル姫にすべてを譲って、彼女の意思に全てを委ねることを告げました。

これこそが、彼女のふたつ目の呪いを解くのに必要なことでした。決断を、彼女の意思に委ねることこそがその条件だったのです。ラグネル姫は涙ながらにガウェインにすがりつき、口づけをかわし、喜びを分かち合いました。

ラグネル姫の呪いが解けたことで、彼女の兄の黒い騎士に掛けられていた呪いも解けました。この騎士もまた、恐ろしい呪いに縛られていましたからです。呪いから解放された黒い騎士は、卑劣な圧政者ではなくなり、アーサー王のもとに馳せ参じると立派な騎士として忠誠を誓いました。




伝説/ケルト/アーサー王と円卓の騎士

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