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歴史映画紹介


光の雨(2001年)



監督:高橋伴明

<キャスト>  樽見省吾:大杉漣  阿南満也:萩原聖人  倉重鉄太郎役の俳優:山本太郎  上杉和枝役の女優:裕木奈江  玉井潔役の俳優:池内万作 他

2001年劇場公開(シネカノン)


【連合赤軍リンチ殺人事件(山岳ベース事件)】 1971年〜1972年にかけ、14人の同志が総括と称したリンチにかけられ殺害された事件。主導的役割をになったとされる森恒夫・永田洋子は72年1月に逮捕され、中心的役割を果たした坂口功・坂東国男らはあさま山荘事件を引き起こす。72年3月に事件が発覚すると左翼過激派への支持は失われた。日本社会運動の転換点というべき事件。

連合赤軍によるリンチ殺人事件を映画化した作品。同名小説の映画化だが設定はかなり異なっているようだ。作品の中では森は倉重、永田は上杉、坂口は玉井とそれぞれ名前が変更されているが、別に実名でもよかったのではないかと思う。映画の中で、劇中劇としてストーリーが展開されていく。個人的にはこういうストーリー展開はあまり好きではない。なんだか、自分たちは戦ったのに今の若いやつらは何をやっているのか。という嫌みのようなものにも受け取れる。正直なところ、リンチ殺人事件そのものよりも劇を通じて彼らがどこか感化させられていく姿のほうがぞっとするような感じがあった。例えば、監督の樽見が失踪したとき、本人がいないところで北川役の青年がミスを連発したからだと誰かが言い始めた。元アイドルの高取が聞き咎めて叱責する。最初に言った人間は自己反省を求められ、いつしか自己反省大会になっていく。

物語は小説『光の雨』の映画化が決まったところから。監督の樽見は学生運動の世代だったが、参加する若者たちは元アイドルやお笑い芸人、劇団員など学生運動には全く縁のない世代。樽見はメイキング映像を若手の阿南に任せる。撮影が続き、困惑しながらも役者達は役を理解しようと務める。そんな時、樽見宛に送られてきた一枚のはがき。それには意味不明の言葉が並んでいた。しかし、樽見はかつての学生運動の時、仲間を裏切った過去があった。ハガキに書かれていたのはかつて裏切った友人の言葉だった。樽見は、もはやこの映画を撮ることはできないと思い、降板してしまう。樽見から後を託された阿南が映画の撮影を再開させるが……。倉重役の山本太郎と、上杉役の裕木奈江の鬼気迫る演技が光る作品。彼らの怪演がなければ凡作に終わっていたんじゃないかと思う。

凄惨なリンチ場面もたくさん出てくる。だが、このサイトの中にはもっと凄惨な作品はいくつか紹介している。歴史を紐解けばこういう事例は枚挙にいとまがないという悲しい現実がある。むしろ、劇中劇の中で、現代の若者が彼らの生き方を追いながら、同時に現代の若者が彼らから何かを掴むということの方を個人的には重視したい。そのため彼らの言葉がフィクションなのが気にかかる。彼らはスタート時には事件について全然知らない。学校でも習わないし、などと答える。事件を演じるにつけあの時代に生きた人たちを知りたいと思うようになる。しかし、彼らはどうも連合赤軍に対して好意的にとらえているような気がするが……そう思うならそれもいいと思うけれど、シナリオの中の言葉ではなく俳優の言葉で語ってほしかったなぁって気がする。

自分は彼らの行動を何ら肯定することも理解することもできないしする気もない。もしも、彼らと同じ時代に生きていたとしても生涯その人生が交わることはなかっただろう。革命だのイデオロギーだのと一見崇高に思える言葉で飾り立て、世の中への不満を公憤にすりかえ破壊活動にまい進する。それは結局、秋葉原で何人も殺した奴と何も変わらない、と思う。『総括』に何か特別な意味を見出そうとしていたようだが誰か特定の人間をやり玉にあげ、吊るしあげにし、全員をそれに参加させることで共犯者意識を持たせて組織としての引き締めを図る儀式。暴力団から暴走族から小学校の学級会まで組織のという名のつく組織の行う常套手段にすぎない。彼らは、限度を見極めることもできない、ただのアマチュアだったというだけの話だ。そんな連中の狂気が、一般の国民に牙をむく前に壊滅したことは、戦後日本にとって僥倖だった、としか自分には思えない。

おススメ度: あの事件すら知らない世代(自分も含めてだが)が増えている中、社会運動の時代を改めて考えるきっかけにはなる作品かと思う。ただ、劇中劇という演出や、その劇の裏側での監督の交代など、個人的にはどうにも好きになれない演出の仕方だった。先にも書いたとおり、自分は彼らの行動は歪んだ正義感の生み出したただの戦争ごっこだったと思っている。それを、あたかも崇高な使命だったかのように印象付けしようと誘導をしているように見えて仕方ない。あくまでも好きか嫌いかといえば嫌いという意味で、おススメ度はにしている。



【原作】






【山岳ベース事件関連】