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歴史映画紹介


インビクタス〜負けざる者たち〜(2009年)


INVICTUS/アメリカ

監督:クリント・イーストウッド

<キャスト>   ネルソン・マンデラ:モーガン・フリーマン  フランソワ・ピナール:マット・デイモン  ジョエル・ストランスキ:スコット・イーストウッド  ジョナ・ロムー:ザック・フュナティ  ルーベン・クルーガー:グラント・L・ロバーツ 他

2010年劇場公開(ワーナー)



「インビクタス」tv-spotマンデラ篇.avi



ストーリーの舞台となっているのは1994年から1995年にかけての南アフリカ。南アフリカは、1990年代初めまでアパルトヘイトと呼ばれる人種隔離政策が行われていた。しかし、諸外国からの非難の圧力により、アパルトヘイト政策は終わりを迎え、1994年の大統領選挙で、ネルソン・マンデラ氏が黒人初の大統領となった。

個人的には、この『インビクタス〜負けざる者たち〜』を観る前に、2008年公開の映画『マンデラの名もなき看守』を観られるとよいと思う。アパルトヘイトものの良作はいくつかあるが今のところこのタイトルしか用意していないし、一番入手しやすいと思うので。ネルソン・マンデラという人物やアパルトヘイトについての理解が深まれば、より物語の背後にあるものが見えやすくなるのではないかと思う。

この『インビクタス〜負けざる者たち〜』のオープニングはネルソン・マンデラ氏が大統領に就任するところから。冒頭では道路で隔てられた2つのグラウンドでラグビーとサッカーをする少年たちが描かれる。片方は整備されたグラウンドで富裕な人間のスポーツであるラグビーに興じる白人の少年たち。片方は、土のグラウンドで裸足でサッカーに興じる黒人の少年たち。その間には柵が張られ互いに行き来できないようになっている。まさにアパルトヘイトの象徴であるこの場面だが、同時に人の心同士に張られた柵でもあったと思う。マンデラが大統領になって、白人官僚たちは解任されると思い、身支度を始めていた。ところが、マンデラ氏は、彼らを解任するどころか、「これからの南アフリカのために協力してほしい」と呼びかける。大統領のボディガードとして配置された人物を見てマンデラ氏のと行動に共にしてきた側近は仰天する。かつて、自分たちと敵対関係にあった白人警察の公安部員だったからだ。

この映画のテーマになるのは寛容さだろうか。かつて、白人に迫害された。黒人は黒人大統領が誕生しまさに我が世の春。今まで虐げられていた黒人が白人に報復して何が悪い、と考えたとしても誰にも責められないし、自分だって同じことを考える。しかし、マンデラ氏は南アフリカのためにはこれまで行政、経済をつかさどってきた白人の協力が絶対に必要だと考えてきた。マンデラ氏は、南アフリカ代表のラグビーチーム「スプリングボクス」のユニフォームやチーム名を変えようとする動きを誠意をもって説得する。ルールが難しいラグビーは富裕な人間しかできないスポーツで黒人選手も一人しかいないアパルトヘイトの象徴だった。しかし、ユニフォームやチーム名を変えることは白人の誇りを汚し、白人と黒人の感情的な溝を深めるだけだと呼びかける。そして、ラグビーこそ民族融和の象徴になると考えたマンデラ大統領は「スプリングボクス」の主将を呼び寄せ、弱小チームの「スプリングボクス」を1995年のワールドカップで優勝させてほしいと励ます。

いくら制度としてのアパルトヘイトがなくなったとしても人の心の中の壁が消えるわけではない。「スプリングボクス」のメンバーは地道な黒人少年らとの交流を通し、国民からの人気が高まり、最初は不満を感じていた白人選手の間にも国の代表としての自覚が高まっていく。いきなり同じ目線に立ってしまった黒人と白人。両者の距離が縮まっていく様を、1995年のラグビーワールドカップでの南アフリカ優勝という実話を通して描いている。

余談だが、2010年は南アフリカでサッカーワールドカップが開かれた。南アフリカに関する報道がにわかに増えたが、多分にもれず不景気な南アフリカでは、アパルトヘイト時代とは逆に白人ということで就職できない実態があることなども報じられた。マンデラ氏の理想はまだ道半ばで、同時にアパルトヘイトも終わってはいない、ということだろうか。

おススメ度: クリント・イーストウッド監督作品としては、らしい演出の少ない映画だった感がある。というよりも、黒人と白人の融合というテーマ自体があるイーストウッド監督らしいテーマで、監督独特の演出の入り込む余地はなかったという気がする。ただ……どんな映画でも役者にスポーツをやらせると……ラグビーの試合のシーンが演技にしか見えず個人的評価を下げる。もちろん、名作だし必見の一本だが。おススメ度はにしている。



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