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歴史映画紹介


実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)(2007年)


日本

監督:若松孝二

<キャスト>  遠山美枝子:坂井真紀  坂口弘:ARATA  永田洋子:並木愛枝  森恒夫:地曵豪  重信房子:伴杏里 他

2008年劇場公開(若松プロダクション=スコーレ)



「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」予告編



若松孝二監督が、このサイトでも紹介している『突入せよ!「あさま山荘」事件(2002年)』のあまりに一方的な権力者側からの描き方に激怒し、私財をなげうってこの作品を撮ったという作品。

学生運動が始まり、一部の先鋭化した過激派左翼が武装化を図り、銃砲店を襲い、郵便局などを襲撃し、やがて、森、永田らの主導による山岳ベース事件が起こる。何人もの同志が、総括と称するリンチにより殺害される中、生き残った赤軍兵士らはあさま山荘で管理人の妻を人質に立てこもり銃撃戦を繰り広げる。一連の連合赤軍の事件を映像化した作品。

3時間10分。決してきれいな画像ではないが、そのほうが凄みを感じさせてくれる。また、役者陣も、この革命戦士という難役に正面から向き合っている、と感じる。ただし、実録、というより再現ドラマの感が強い。彼らが何を考え何のために戦ったのか。彼らがなぜ内ゲバという内部抗争に傾いていったのか、なかなか見えてこない。前半は、安保闘争から始まる一連の闘争を時系列順に追いながら緊張感をもった演出で革命戦士たちの雄姿をたたえる。しかし、後半以降、森・永田の独裁体制を維持するためとしか思えない壮絶なリンチ、そしてあさま山荘事件。どうにも、役者陣の力不足も含めて緊張感がなくなってしまう。結果的に、地曵豪・並木愛枝の大義を掲げた人間の――というよりも、二人とも劣等感の塊の人間のように描かれているように感じる。森は一度敵前逃亡したことが強調され、永田の遠山に対する態度は明らかに女の嫉妬で描かれている――の残酷さが強く残る。

あさま山荘の中で、「オトシマエをつける」という坂口に対し、一番年少の赤軍兵士が「おれたちには勇気がなかったんだよ!」と叫ぶ。おそらくこの作品のテーマがこのセリフだろう。森や永田の『総括』に対して戦わなかったことに対する言葉だったのか、自分たちの誤りを認めることができずひたすら暴走するに身を任せてしまったことに対する後悔だったのか。色々考えながらみられた作品ではあったと思う。

自分は、劇場でこの作品を見ることはできず、DVDで初めてこの作品を観たのだが、こういう淡々と時系列を追いながら進みて行く作品だったのには少し驚いた。この社会運動自体やその時代について記憶にとどめておくべきと思うので、1度は観たほうがいいとも思う。

『突入せよ!「あさま山荘」事件』は、学生運動や内ゲバなどについてある程度の知識を持っていることを前提として描いているように感じたので、もしも、これから見ようと思っている方がいたら、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』を見比べながら観たほうが内容の理解も深まるのかもしれない。あさま山荘内部で赤軍兵士たちが、人質となっている管理人の妻に「警察はあなたの生存を知っている」「警察はあなたの身を心配しているのはただの建前だ」などと言っている間、外の警察官たちもまた、一人の人質の命を救うために懸命だったのだ。『突入せよ!「あさま山荘」事件』の原作者でもある佐々氏はその著書の中で、最後まで人質だった女性の生存の確認をするために様々な手段を講じていたこと、そして最後まで分からなかったことを明かしておられる。これは嘘ではないだろう。確かに彼らにも正義があったのかもしれない。しかし、人々の共感と信頼を得られない正義など、ただの独善にすぎない、ということだろう。

おススメ度 このサイトでも紹介している山岳ベース事件を題材にした『光の雨(2001年)』とあさま山荘事件を舞台にした『突入せよ!「あさま山荘」事件(2002年)』の描いた時代を、闘争に明け暮れる連合赤軍兵士の側から描いた作品。実録というより再現ドラマのような感じのする作品だが、低予算でよくぞここまでという感じがする。おススメ度はBにしている。



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