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歴史映画紹介


私は貝になりたい(2008年)


日本

監督:福澤克雄

<キャスト>  清水豊松:中居正広  清水房江:仲間由紀恵  西沢卓次:笑福亭鶴瓶  矢野中将:石坂浩二 他

2008年劇場公開(東宝)



映画「私は貝になりたい」 予告編



1958年にテレビドラマで放送され、翌59年には劇場版が公開された同名作品のリメイク。脚本はオリジナルと同じ橋本忍氏で、テレビ黎明期の伝説的作品を、主演、中居正広・仲間由紀恵で見事リメイクしている。戦争・敗戦という現実に翻弄される力ない小市民の悲劇を描く。


戦時下の日本。高知で理髪店を営む清水豊松。妻と子供とともに、日々を精いっぱいに生きる彼のもとにもついに赤紙(召集令状)が届く。本土防衛に備えた部隊で二等兵として苦しい訓練の日々が続く。ある時、空襲に来た米軍の爆撃機が撃墜され豊松の部隊に捕虜捜索の命令が出される。捕虜を発見したが、とてもつれては帰れないという上官の判断で、捕虜はその場で殺害されることになる。豊松は捕虜を殺すように命じられる。難色を示した豊松を上官は、「上官の命令は天皇陛下の命令である」と叱りつける。


復員し、今度こそ平穏な日々が遅れると思っていた豊松のところにMP(ミリタリーポリス)がやってきて豊松は逮捕されてしまう。捕虜を殺したことで戦犯として裁かれることになる。二等兵は牛や馬も同然で上官の命令に従うしかなかったと主張する豊松だったが、彼に命令を下した上官たちには有期刑が下される中、豊松には絞首刑の判断が下される。


シナリオがやはりしっかりしている。豊松を救うために署名を求めて奔走する妻の姿、豊松が獄中にいる間に生まれたわが子へのいつくしみ、いまや同じスガモプリズンに収容されることになった矢野中将との交流、看守や同房の西沢とも情を通わせるようになる。講和条約が迫り希望が見え始める中、房を変更するように命じられる。減刑されたと喜ぶプリズンの収容者たち。しかし、彼を待っていたのは死刑執行の命令だった。最期の時が近づく中、豊松は遺書をしたためる。


悲壮さを感じさせながら、ラストまでは暗い場面にならないように配慮されている。主演陣の演技に関してはどうこう言わないものの、大変感動的な作品なっていると感じた。国だのなんだのは弱い人間を守るためにあるはずなのに、結局つらい思いをするのはそんな弱い人間ばかり。戦争と暴力の不合理を描けていると感じた。


ちなみに、原作者として加藤哲太郎氏の名前がクレジットされているが、1958年当時に公開されたとき、作中に出てくる遺書の内容が加藤氏が公開したことがある遺書と内容があまりに類似していると抗議し、裁判での係争を経て、クレジットされることになった。豊松のモデルは加藤氏ではないので、尉官だったのを二等兵にしたり、加藤氏は助命の嘆願が功を奏して減刑されたのに、豊松を殺してしまったのは不当な改変だとかというのは非難として適当ではないだろう。ただ、実際には二等兵で刑死した者はいなかったらしい。そのくらいの一言は付け加えるべきだったのではないかと思う。


おススメ度: 個人的に、フランキー堺主演の映画も含めてリメイク前の作品を観ていない。なのでこの作品のみの感想しか書けないが、戦争の不条理を描いたなかなかの佳作だったと思う。なのに、おススメ度をとしている理由は一つはいかにも泣いてくださいと言わんばかりのストーリー展開に、何か違う、と感じてしまったことだろうか。加藤哲太郎氏の名前が原作にクレジットされているが、氏は尉官であり二等兵ではなかった。加藤氏は家族の助命嘆願の署名がかないマッカーサー直々に原判決を破棄して終身刑、即日禁固30年に減刑された。服役しているころに志村郁夫名義で発表した「狂える戦犯死刑囚」の中に遺書を発表した。これが「私は貝になりたい」の中で(一部を変更された形とはいえ)使用されたと裁判になった。加藤氏の話ではないとわかっていても、原作者にクレジットされているとついついそんなことを考えてしまう。泣かせるために豊松を殺したような気がして何だかひどく堪らない気分がしてくる。




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